翔べないひよこのブログ

早稲田大学の三年生です。孔子の説く道を志して日々、儒学を学んでいます。専門としては古典中国学と明治漢学者の『論語』解釈になります。

『論語注疏』学而篇第五章「子曰道千乗之國〜」①

今回は『論語注疏』学而篇の第五章を扱います。古代の統治体制への言及があり、特に『司馬法』の説く所はイメージするのが難しく、此の箇所の読みにはとりわけ自信がないです。ご指摘等あればぜひお願いします。

 

<原文>

子曰道千乗之國
<訓読>
子曰く千乗の國を道びくに、
<現代語訳>
孔子先生が言うには、「千乗の国を導くには、
 
<原文>
馬曰道謂為之政教
<訓読>
馬曰く、道とは之が政教を為すを謂ふ。
<現代語訳>
馬融によると、「「道」とは政治・教令を為すことを言う。
 
<原文>
司馬法六尺為歩歩百為畝畝百為夫夫三為屋屋三為井井十為通通十為成成出革車一乗
<訓読>
司馬法に「六尺を歩と為し、歩百を畝と為し、畝百を夫と為し、夫三を屋と為し、屋三を井と為し、井十を通と為し、通十を成と為す。成は革車一乗を出だす。」とある。
<現代語訳>
司馬法』には「六尺を歩とし、歩百を畝とし、畝百を夫とし、夫三を屋とし、屋三を井とし、井十を通とし、通十を成とする。成であるならば革車一乗を出す。」とある。
 
<原文>
然則千乗之賦其地千成居地方三百十六里有畸唯公侯之封
<訓読>
然らば則ち千乗の賦は其の地千成にして、居地の方三百十六里有畸なるは、唯だ公・侯の封のみ。
<現代語訳>
そうであるならば、千乗の国は革車を千乗出せる程豊かな国であるので、その賦役はそれに見合うものであり、居住地が三百十六里あまりに広がるのは公・侯の位だけである。
*自信がないです
 
<原文>
乃能容之
<訓読>
乃ち能く之を容る。
<現代語訳>
なので、この賦役を受け入れられるのである。
 
<原文>
大国之賦亦不是過
<訓読>
大国の賦と雖も亦是れ焉に過ぎず。と。
<現代語訳>
大国の賦役と言ってもこの程度のものなのである。」とある。
 
<原文>
包曰道治也
<訓読>
包曰く、道は治なり。
<現代語訳>
包咸によると、「「道」は「治」である。
 
<原文>
千乗之国者百里之国也
<訓読>
千乗の国は百里の国なり。
<現代語訳>
千乗の国とは百里四方の国である。
 
<原文>
古者井田方里為井十井為乗
<訓読>
古の井田は、方里を井と為し、十井を乗と為す。
<現代語訳>
古代に行われた井田は、一里四方の田地を井として、十井を乗とした。
 
<原文>
百里之国適千乗也
<訓読>
百里の国は千乗に適するなり。と。
<現代語訳>
百里の国は千乗の国に匹敵する。」となる。
 
<原文>
融依周禮
<訓読>
融、周禮に依る。
<現代語訳>
馬融は『周禮』に依拠し、
 
<原文>
包依王制孟子
<訓読>
包、王制・孟子に依る。
<現代語訳>
包咸は『礼記』王制篇と『孟子』に依拠する。
 
<原文>
義疑故両存焉
<訓読>
義疑わしき故に両つ在す。
<現代語訳>
「道」及び「千乗の国」の意味する所は明らかでないので、代表する二つの解釈を収録した。
 
<原文>
敬事而信
<訓読>
事を敬するに信、
<現代語訳>
政を行うのに偽りの心なく軽々しく行なわず、
 
<原文>
包曰為國者擧事必敬慎與民必誠信
<訓読>
包曰く、國を為むる者は事を擧ぐるに必ず敬慎にして民の與に必ず誠信なるべし、と。
<現代語訳>
包咸によると、「国を治める者は政策を立案するのに必ず軽々しくせず、民のために必ず誠の心を以てせねばならない。」とある。
 
<原文>
節用而愛人
<訓読>
用を節して人を愛し
<現代語訳>
倹約に努めて、自らが不自由しても民は不自由しないようにし、
 
<原文>
包曰節用不奢侈國以民為本故愛養之
<訓読>
包曰く、用を節して奢侈せず。國は民を以て本と為す。故に之を愛養す。と。
<現代語訳>
包咸が言うには「倹約に努めて贅沢をしない。国は民があってこそ成り立つのである。故に民を愛し養うのである。」と。
 
<原文>
使民以時
<訓読>
民を使うに時を以てす。と
<現代語訳>
公共事業に民を使役するに於いては農閑期を以てしなければならない。」である。
 
<原文>
包曰作事使民必以其時不妨奪農務
<訓読>
包曰く、事を作し民を使うに必ず其の時を以てし、農務を妨奪せず。と。
<現代語訳>
包咸が言うには「政策を実行し、それに民を使役するのには必ず農閑期を選ぶようにし、民の農業を妨害し其の時間を奪ってはならない。」と。
 
<補説>
包咸の説は見た事があったので、イメージはつきますが、馬融の説は初めて見た為なかなかイメージしづらく、訳も合っているかどうか不安です。また、包咸の説は漢学者の見解とも共通しているように見受けられました。
今回は本文及び注で終わりです。次回から疏に入っていきます。