翔べないひよこのブログ

早稲田大学の三年生です。孔子の説く道を志して日々、儒学を学んでいます。専門としては古典中国学と明治漢学者の『論語』解釈になります。

『論語注疏』学而篇第五章「子曰道千乗之國〜」②

前回からの続きで今回は疏から始まります。

 

<原文>

子曰道至以時
<訓読>
子曰くから時を以てすに至るまで。
<現代語訳>
子曰くから時を以てすに至るまで。
 
<原文>
正義曰此章論治大國之法也
<訓読>
正義に曰く「此の章大國を治むるの法を論ずるなり。」と。
<現代語訳>
論語正義』に「此の章は大国を統治する法について論じている。」とある。
 
<原文>
馬融以為道謂為之政教
<訓読>
馬融道を為すを以て、之政教を為すと謂ふ。
<現代語訳>
馬融は「道を為す」を解釈して、「政教を為す」とし、
 
<原文>
千乗之國謂公侯之國方五百里百里者也
<訓読>
千乗の國は公・侯の國五百里、四百里なるを謂ふなり。
<現代語訳>
千乗の国とは公・侯の国で四百里から五百里である、としている。
 
<原文>
言為政教以治公侯之國者擧事必敬慎與民必誠信省節財用不奢侈而愛養人民以為國本作事使民必以其時不妨奪農務
<訓読>
言ふこころは、政教を為すを以て公・侯の國を治むる者は、事を擧ぐるに必ず敬慎なるべく、民の與に必ず誠信なるべく、財用を省節するべく、奢侈をせず、而して人民を愛養し、以て國の本と為し、事を作し民を使ふに必ず其の時を以てし農務を妨奪せざるべし。
<現代語訳>
馬融の言うところは、政教を為して公・侯の国を治める者は、政を為すに必ず慎み、民のために必ず誠の心を尽くし、財を節約するために贅沢をせず、人民を愛し養い、人民が国の根幹であるとする。事業を行う為に人民を使役するに及んでは十分に時期を鑑みて農業を妨害しその作業時間を奪わないようにしなければならない。
 
<原文>
此其為政治國之要也
<訓読>
此れ其れ政を為し國を治めるの要なり。
<現代語訳>
このことは政を為して国を治めるための要である。
 
<原文>
包氏以為道治也
<訓読>
包氏以為へらく「道」は「治」なり。
<現代語訳>
包咸は「道」を解釈して「治」とし、
 
<原文>
千乗之國百里之國也
<訓読>
千乗の國は百里の國なり。
<現代語訳>
千乗の国は百里の国のこととしている。
 
<原文>
夏即公侯殷周惟上公也餘同
<訓読>
夏には即ち公・侯、殷・周には惟だ上公のみなり。餘は同じ。
<現代語訳>
夏には公・侯の官があり、殷・周には上公の官が置かれた。他の官職に関しては同じである。
 
<原文>
注馬曰道至存焉
<訓読>
注の「馬曰道」から「存焉」に至るまで。
<現代語訳>
注の「馬曰道」から「存焉」に至るまで。
 
<原文>
正義曰以下篇子曰道之以政故云道謂為之政教
<訓読>
正義に曰く「下篇に「子曰く之を道びくに政を以てす」とあるを以て、故に「道は之が政教を為すを謂ふ。」と云ふ。」と。
<現代語訳>
論語正義』に「『論語』の為政篇に「孔子先生が「民を導くのに政を以てす。」と仰った。」とあることから、馬融は「「道」は政教を為すことを言うのである。」としたのである。」とある。
 
<原文>
史記齊景公時有司馬田穰苴善用兵
<訓読>
史記』に「齊の景公の時、司馬田穰苴は善く兵を用ひる」と有る。
<現代語訳>
史記』に「齊の景公の時、司馬田穰苴は用兵の術に優れていた。」とある。
 
<原文>
周禮司馬掌征伐
<訓読>
『周禮』、司馬は征伐を掌るとす。
<現代語訳>
『周禮』に司馬は征伐を掌る、とある。
 
<原文>
六國時齊威王使大夫追論古者兵法附穰苴於其中凡百五十篇號曰司馬法
<訓読>
六國の時、齊の威王大夫をして古の兵法を追論せしめ、穰苴を其の中に附し、凡そ百五十篇、號して『司馬法』と曰ふ。
<現代語訳>
戦国の時、齊の威王は大夫に命じて古代の兵法に意見を続けて論じさせ、穰苴もその対象とし、約百五十篇、『司馬法』と名付けた。
 
<原文>
此六尺曰歩至成出革車一乗皆彼文也
<訓読>
此の「六尺曰歩」から「成出革車一乗」に至るまで皆彼の文なり。
<現代語訳>
此の「六尺曰歩」から「成出革車一乗」に至るまでは全て『司馬法』の文章である。
 
<原文>
引之者以證千乗之國為公侯之大國也
<訓読>
之を引く者は千乗之國を以て證するに公・侯の大國と為す。
<現代語訳>
司馬法』を引用する者は千乗の国を説明するのに公・侯の大国であるとする。
 
<原文>
云然則千乗之賦其地千成者以成出一乗千乗故千成
<訓読>
然らば則ち千乗の賦は其の地千成にして」と云ふは、成は一乗を出だすを以て、「千乗」なるが故に「千成」なり。
<現代語訳>
「そうであるならば千乗の賦を課される国は千成の国である」と言うのは、成の単位は一乗の革車を産出できることを基準としているので、「千乗」は「千成」となるのである。
 
<原文>
云居地方三百十六里有者以方百里者一為方十里者百
<訓読>
「居地の方三百十六里有畸なるは」と云ふは、方百里なる者一を以て、方十里なる者百と為す。
<現代語訳>
居住地だけでも三百十六里あまりに広がる」と言うのは、四方百里で一つの塊と見るとそれは四方十里百個分である。
 
<原文>
方三百里者三三而九則為百里者九
<訓読>
方三百里なる者、三三にして九なれば、則ち方百里なる者九と為す。
<現代語訳>
四方三百里と言うのは、三×三で九であるから四方百里九つ分である。
 
<原文>
合成方十里者九百得九百乗也
<訓読>
成は方十里なる者九百を合すれば、九百乗を得るなり。
<現代語訳>
成は四方十里九百個分であるので、九百乗を得ることができる。
 
<原文>

計千乗猶少百乗方百里者一也

<訓読>

計るに千乗に猶ほ少なきこと百乗、方百里なる者は一なり。

<現代語訳>

計算してみると千乗には百乗少ない、方百里一個分である。

 

<補説>

最後の「百里者一為方十里者百〜」以降の話はフォロワーさんの助言をお借りして読みました。ありがとうございます。

次回も冒頭部は土地の面積に関する話になりそうです。