翔べないひよこのブログ

早稲田大学の三年生です。孔子の説く道を志して日々、儒学を学んでいます。専門としては古典中国学と明治漢学者の『論語』解釈になります。

『春秋公羊傳何休解詁』隠公④

原文

傳 

立適以長不以賢立子以貴不以長
適謂適夫人之子尊無與敵故以齒子謂左右媵及姪娣之子位有貴賎又防其同時而生故以貴也禮適夫人無子立右媵右媵無子立左媵左媵無子立嫡姪娣嫡姪娣無子立右媵姪娣右媵姪娣無子立左媵姪娣質家親親先立娣文家尊尊先立姪嫡子有孫而死質家親親先立弟文家尊尊先立孫其雙生也質家据見立先生文家据本意立後生皆所以防愛争
 
訓読 
適を立つるに長を以てし賢を以てせず。子を立つるに貴を以てし長を以てせず。
適は適夫人の子を謂ふ。尊きに與に敵無く、故に齒を以てす。子は左右の媵及び姪娣の子を謂ふ。位に貴賤有り、又同時に生まるるを防ぐ故に貴を以てすなり。禮に「適夫人に子無くんば、右媵を立つる。右媵に子無くんば、左媵を立つる。左媵に子無くんば、嫡姪娣を立つる。姪娣に子無くんば、右媵姪娣を立つる。右媵姪娣に子無くんば、左媵姪娣を立つる。質家は親親なれば先にを立つる。文家は尊尊なれば先に姪を立つる。嫡子に孫有りて死せば、質家は親親なれば先に弟を立つる。文家は尊尊なれば先に孫を立つる。其れ生なるや、質家は見に据りて先に生るるを立つる。文家は本意に据りて後に生るるを立つる。皆愛争を防ぐ所以なり。
 
現代語訳

適子を(君として)立てるには、長幼の序によって賢愚によらない。庶子を(君として)立てるには、身分の貴賤によって長幼の序によらない。

「適」とは適夫人の子をいう。(適夫人の子は)位の尊卑に差が無いので、年齢によって立てる。「子」とは嫁入りに付き従う左右の侍女及び姪娣の子のことである。こちらは位に貴賤があり、又同時に生まれた場合の混乱を防ぐために身分の貴賤によって立てるのである。禮に「適夫人に子がなければ、右の侍女の子を立てる。右の侍女に子がなければ、左の侍女の子を立てる。左の侍女に子がなければ、嫡夫人の姪娣の子を立てる。嫡夫人の姪娣に子がなければ、右の侍女の姪娣の子を立てる。右の侍女の姪娣に子がなければ、左の侍女の姪娣の子を立てる。質家は親親を旨とするから、先に娣の子を立てる。文家は尊尊を旨とするから、先に姪の子を立てる。嫡子 が孫を残したまま死んだならば、質家は親親を旨とするから、先に嫡子の弟を立てる。文家は尊尊を旨とするから、先に嫡子の孫を立てる。もし双子であれば、質家は出産時の順序によって先に生まれた方を立てる。文家は本始という意趣によって、後に生まれた方を立てる。いずれも、肉親内における偏愛による争いを避けるためである。

*姪とは兄の娘であり、娣とは兄の妹である。

*質家とは質樸を重んじる家(王朝)のことである。
*文家とは文華を重んじる家(王朝)のことである。

*「本意」の意味はよく分からない。質家と文家の基準もよくわからない所である。

 

 

原文 

桓何以貴

据倶公子也
 
訓読
桓 何を以て貴しとす。
倶に公子に据ればなり。
 
現代語訳
桓公は何を以て貴いとされるのか。

(隠公も)桓公も共に公子であるから。

 

 

原文

母貴也
据桓母右媵
 
訓読
母貴ければなり。
桓の母、右媵なるに据る。
 
現代語訳
母の身分が貴いからである。
桓公の母は、右の侍女であるから。
 
 
原文 

母貴則子何以貴

据倶言公子

 

訓読

母貴ければ則ち子何を以て貴しとす。
倶に公子と言ふに据る。
 
現代語訳
母の身分が貴ければ、どうして子が貴いことになるのか。

庶子は)等しく公子と呼ばれるから。

 

 

原文

子以母貴
以母秩次立也
 
訓読
子、母を以て貴しとす。
母の秩次を以て立つなり。
 
現代語訳
子は母が貴ければ貴いのである。
母の序列によって立つ。
 
 
原文
母以子貴

禮妾子立則母得為夫人夫人成風是也

 

訓読

母、子を以て貴しとす。

禮に「妾子立てば、則ち母夫人たるを得」と。夫人成風是なり。

 

現代語訳

母は子によって貴くなるのである。
禮に「妾の子が(君として)立てば、母は夫人となることができる」とある。夫人成風がその例である。
 
 
原文
経 
三月公及邾婁儀父盟于眛

及者何與也

若曰公與邾婁盟也

 

訓読

三月公及び邾婁の儀父、眛に盟す。

「及」とは何ぞや。

「公と邾婁に盟す」と曰ふの若きなり。

 

現代語訳

三月、隠公と邾婁の儀父が、眛の地で會盟した。
「及」とはどういう意味か。
「公と邾婁に盟す」というのと同義である。
 
 
原文
皆與也
 

都解經上㑹及暨也

 

訓読

及・、皆與なり。

都て経に上る及・を解するなり。
 
現代語訳
」「及」「」の字は全て「與」の意味である。

経文にある「㑹」・「及」・「暨」の字を一度に解説したのである。