翔べないひよこのブログ

早稲田大学の三年生です。孔子の説く道を志して日々、儒学を学んでいます。専門としては古典中国学と明治漢学者の『論語』解釈になります。

『論語注疏』学而篇第四章

今回は学而篇第四章を扱う。

*太字は『論語』本文で、細字が注疏である。

<原文>

<訓読>
曾子曰く
<現代語訳>
曾子が言うには、
 
<原文>
馬曰弟子曾参
<訓読>
馬曰く弟子の曾参なり
<現代語訳>
馬融の言葉によると弟子の曾参のことである。
 
<原文>
吾日三省吾身
<訓読>
吾日に吾が身を三省す。
<現代語訳>
自分は一日に三度自らの行いを反省する。
 
<原文>
為人謀而不忠
<訓読>
人の為に謀りて忠ならざるか。
<現代語訳>
人の為に行動して忠に背く所がなかったか。
 
<原文>
與朋友交而不信乎
<訓読>
朋友と交わりて信ならざるか
<現代語訳>
朋友と交流して信に背く所がなかったか。
 
<原文>
傳不習乎
<訓読>
傳ふるに習わざるをか。と。
<現代語訳>
人に物事を伝えるのに、未だ自分が習得していないことを以てしなかったか。」と。
 
<原文>
言凡所傳之事得無素不講習而
<訓読>
言ふこころは、凡そ傳ふる所の事は、素より講習せざるをして之を傳ふる無きを得たるか。
<現代語訳>
言うこころは、物事を伝えるとは、自らが未だ講習していないことを他人に伝えることが無い事を指す。
 
<原文>
曾子曰至習乎
<訓読>
曾子曰くから習に至るまで
<現代語訳>
曾子曰くから習に至るまで
 
<原文>
正義曰此章論曾子省身慎行之事
<訓読>
正義に曰く、此の章、曾子身を省みて行いを慎むの事を論ず。
<現代語訳>
此の章は、曾子が自分のことを省みて、行いを慎むことを論じている。
 
<原文>
弟子曾参嘗曰吾毎日三自省察己身
<訓読>
弟子の曾参嘗て曰く吾毎日三たび自ら己の身を省察す。
<現代語訳>
孔子の弟子曾参は嘗て「私は一日に三度自らを省みる。
 
<原文>
為人謀事而得無不盡忠心乎
<訓読>
人の為に事を謀りて忠心を盡さざる無きを得たるか。
<現代語訳>
他人のために事を為そうとして、忠心を尽くさないことは無かったか。
 
<原文>
與朋友結交而得無不誠信乎
<訓読>
朋友と交わりを結びて、誠信ならざる無きを得たるか。
<現代語訳>
朋友と交わり親しむに及んで誠実を尽くさない事はなかったか。
 
<原文>
凡所傳授之事得無素不講習而妄傳乎
<訓読>
凡そ傳授する所の事、素より講習せずして妄りに傳ふる無きを得たるか。
<現代語訳>
他人に教え伝える事で、未だ自分が修め切っていないうちに教授することはなかったか。
 
<原文>
以謀貴盡忠朋友主信傳悪穿鑿故曾子省慎之
<訓読>
謀には忠を盡すを貴び、朋友には信を主とし、傳ふるには穿鑿を悪むを以て、故に曾子省みて之を慎む。」と。
<現代語訳>
人の為の行いでは忠の心を尽くす事を尊び、朋友と交わるのに信の心を大事とし、人と交わるのに憶測を以てすることを憎む。其故曾参は自分の身を省みて行いを慎むのである。」と。
 
<原文>
注馬曰弟子曾参
<訓読>
注に馬曰く弟子の曾参なり。と。
<現代語訳>
注に馬曰く弟子の曾参なり。と。
 
<原文>
正義曰史記弟子傳云曾参南武城人字子輿
<訓読>
正義に曰く、史記弟子傳に云ふ、曾参は南武城の人にして字は子輿。
<現代語訳>
論語正義』によると、史記孔子弟子列伝に「曾参は南武城の出身で字は子輿。
 
<原文>
孔子四十六歳
<訓読>
孔子より四十六歳少し。
<現代語訳>
孔子よりも四十六歳年少であった。
 
<原文>
孔子以為能通孝道故授之業作孝経
<訓読>
孔子は以て、能く孝道に通ずと為し、故に之に業を授け、孝経を作らしむ。
<現代語訳>
孔子は曾参のことを孝道に通じた人物であると評した。そのため、孔子は曾参に學問を教授し『孝経』を制作させたのである
 
<原文>
死於魯
<訓読>
魯に死す。と
<現代語訳>
魯国にて死んだ。」とある。